DX推進は何から始める?DX担当者がいない企業の進め方を解説

DX推進は何から始める?DX担当者がいない企業の進め方を解説

DX(デジタルトランスフォーメーション)は、現代のビジネスにおいて取り組むべく施策となっています。しかし、「何から始めれば良いかわからない」「自社に本当に必要なのか?」といった疑問をお持ちの方も多いでしょう。

本記事では、DXの基本的な概念から具体的な進め方、推進における課題、成功事例まで網羅的に解説します。

そもそもDXとは、何なのか1章では紐解いていきます。DX推進について、詳しく解説している記事がありますので、併せてご参照ください。

DX推進がなぜ必要なのか?推進すべき理由と成功事例を紹介

DX

1-1.DXの概要と重要性

DXとは、デジタル技術を活用して、ビジネスプロセス、組織、文化、顧客体験などを根本的に変革し、競争優位性を確立していく取り組みのことです。

これは単に新しいITツールの導入やシステム改修に留まらず、事業そのもののあり方、提供する価値、組織文化までを変革することを目的としています。現代の市場は、技術革新のスピードが速く、消費者のニーズも多様化・複雑化しています。このような変化の激しい環境下で、企業が持続的に成長し、競争力を維持するためには、DXの推進はもはや選択肢ではなく、企業として取り組まないといけないものになっています。

まだDXを導入していない企業の方は、DXの基本概念を理解し、その重要性を認識することが第一歩となりますので、本記事を通して伝わってくれたら本望です。

1-2.DX推進に必要な3つの要素

DXを成功裏に推進するためには、いくつかの重要な要素が不可欠です。中でも必要な3つの要素があります。

  • ビジョン
    DXによって企業が目指すべき将来像や達成したい目標を明確に示すものです。この明確なビジョンは、組織全体に共通の方向性を示し、全従業員の意識を統一させる羅針盤の役割を果たします。
  • 人材
    DXの変革を実際に推進していくための人的資源です。デジタルスキルを持った人材はもちろんのこと、変化を恐れず、新しい技術や考え方を受け入れる柔軟性を持った人材が、DXの推進力となります。既存の従業員のリスキリングや外部からの専門人材の獲得など、多様なアプローチが考えられます。
  • テクノロジー
    DXの変革を実現するための基盤となるものです。 クラウドコンピューティング、人工知能(AI)、モノのインターネット(IoT)、ビッグデータ分析などのデジタル技術は、業務プロセスの効率化、新たなサービス開発、顧客体験の向上など、DXの具体的な施策を実行するための強力なツールとなります。

これらの3つの要素が有機的に連携し、相互に補完し合うことで、DXはより効果的に推進され、企業の持続的な成長に繋がっていくのです。

2章では、DX推進の進め方を解説します。

ステップ1:DX推進の目的を設定する

DX推進の第一歩として、最も重要なのは「DXによって何を達成したいのか」という目的を明確に設定することです。 曖昧な目標設定では、全社的な取り組みとして推進していくことが困難になります。

具体的な目的の例としては、以下のようなものがあります。

  • 顧客満足度の向上
  • 競合他社との差別化
  • 新規事業の創出
  • 既存事業の収益性向上
  • 業務効率の抜本的な改善

これらの目的は、企業の経営戦略やビジョンと密接に連携している必要があります。例えば、顧客満足度向上を目的とするのであれば、顧客データ分析に基づいたパーソナライズされたサービスの提供や、より迅速で丁寧な顧客対応を実現するためのシステム導入などが考えられます。

新規事業創出を目指すのであれば、市場のニーズを捉えた新しいデジタルサービスの企画・開発が中心となります。 目的が明確になることで、次に取るべき具体的なアクションが見えてきます。その目的達成に向けて、組織全体で共通の認識を持つことが、DX推進の成功への鍵となります。

ステップ2:社内の課題を洗い出す

DX推進の目的が明確になったら、次に、現状の企業活動における課題を徹底的に洗い出すフェーズに入ります。この課題の洗い出しは、DXの目的達成のために、どのような変革が必要かを具体的に特定する上で非常に重要です。

いろんな視点で課題を見つけることができると思います。例えば以下のようなものが挙げられます。

  • 業務プロセス
    手作業による非効率なデータ入力、部署間での情報共有の遅延、承認プロセスの煩雑さなど
  • 顧客体験
    問い合わせへの対応が遅い、利用しにくいインターフェース、ニーズに合わない商品・サービス提供など
  • 技術
    老朽化したレガシーシステムの存在が、新たな技術の導入を阻害したり、セキュリティリスクを高めたりしているケース

これらの課題を特定する際には、現場の従業員の声に耳を傾けることが極めて重要です。日々の業務に携わっているからこそ、現場ならではの具体的な課題や、改善のヒントが得られます。部署横断的なワークショップやアンケートなどを活用し、多角的な視点から課題を抽出し、リストアップしていきましょう。

ステップ3:DX推進体制の整備

続いては、推進体制の構築になります。まず、DX推進の責任者を明確に任命しましょう。責任者は、DXプロジェクト全体の進捗管理、関係部署との調整、経営層への報告など、多岐にわたる役割を担います。基本的には、経営層の中、もしくは経営戦略を深く理解している人物が適任とされます。

次に、具体的なDX施策を実行するためのプロジェクトチームを編成します。このチームには、IT部門の担当者だけでなく、事業部門の担当者、マーケティング担当者、余力があれば外部の専門家などを加えても良いでしょう。多様な視点を取り入れることで、いろんな考え方が相まみえてより良い推進に繋がるのではないでしょうか。

推進していく上で重要なのが、経営層の強いコミットメントを常に得ながら、プロジェクトを進めることです。経営層の理解と支援がなければ、全社的な協力を得ることは難しく、DX推進は頓挫してしまう可能性があります。

また、DXは一部の部門だけで完結するものではありません。全社を巻き込み、従業員一人ひとりの意識改革を促すようなコミュニケーション戦略も同時に展開していく必要があります。定期的な情報共有会や、成功事例の共有などを通じて、DXへの理解と協力を深めていけるのではないでしょうか。

ステップ4:優先順位を決める

洗い出された多くの課題や設定されたDXの目的を達成するための施策の中から、何から着手すべきか、優先順位を決めることが次のステップです。すべての課題に同時に取り組むことはリソース的に困難であり、効果も分散してしまいがちなので、優先順位付けにおいては、主に「実現可能性」と「ビジネスへのインパクト(効果)」の2つの軸で評価すると良いです。

実現可能性とは、技術的な難易度、必要なコスト、社内リソースの状況などを考慮し、現時点で実行可能かどうかを判断することです。

ビジネスへのインパクトとは、その施策を実行することで、DXの目的にどれだけ貢献できるか、どれだけ事業成長に繋がるかを評価します。

一般的には、「実現可能性が高く、かつビジネスへのインパクトも大きい」両方を満たす施策から優先的に着手するのがセオリーではあります。あとは、必ずしも最初から大きな成果を狙う必要はありません。時には、迅速に実行でき、比較的容易に効果が確認できる「小さくて面倒な業務」のデジタル化から始めるのも良いでしょう。いわゆる「スモールスタート」のことですが、DXの成功体験を積み上げ、組織内のDXへの機運を高める効果があるので、これもかなり有効な手段です。

ステップ5:業務のデジタル化と効率化

続いて、ステップ4で決めた優先順位付けに基づき、具体的なDX施策の実行フェーズに入ります。この段階では、特に定型業務や反復的な作業のデジタル化と、それに伴う業務効率化に焦点を当てることが一般的です。

例えば、RPA(Robotic Process Automation)を活用することで、PC上の定型業務を自動化できます。データ入力、書類作成、システム間の情報連携といった時間のかかる作業を人間に代わってコンピューターが実行できるようになります。

また、ノーコード・ローコード開発ツールは、プログラミングの専門知識がなくても、比較的容易に業務アプリケーションを開発できるため、現場のニーズに合ったツールを迅速に導入することが可能になります。

これらのデジタル化・自動化の恩恵は、単に作業時間を短縮するだけでなく、人間でないと進まない業務、例えば顧客とのコミュニケーション、新しいアイデアの創出、戦略立案など、より多くの時間を割けるようになります。

従業員のエンゲージメント向上にも繋がり、組織全体の生産性向上にも繋がるでしょう。このステップで得られた効率化やデジタル化されたデータは、次のステップに繋がっていきます。

ノーコード開発、ローコード開発の詳細は下記記事をご参照ください。

ノーコード開発とは?メリットと有能ツール10選を含めて解説

ローコード開発とは?メリットと有能ツール10選を含めて解説

ステップ6:既存業務の高度化・ビジネスモデル変革

業務のデジタル化と効率化が進むにつれて、新たな課題や機会が見えてきます。次のステップとして、デジタル化によって得られた膨大なデータを分析・活用し、既存の業務プロセスをより高度化させていく必要があります。

例えば、顧客の購買履歴や行動データを分析することで、よりパーソナライズされたマーケティング施策を展開したり、顧客一人ひとりのニーズに合わせた商品・サービスを提案することができるようになります。

また、IoTデバイスから収集されるセンサーデータなどを活用して、生産ラインの稼働状況をリアルタイムで監視・分析し、予兆保全によってダウンタイムを削減したり、生産効率を最適化することもできるようになります。

最終的には、これらの既存業務の高度化の先に、ビジネスモデルそのものの変革を目指します。単に業務を効率化するだけでなく、デジタル技術を活用して新たな価値を作って、これまでとは異なる方法で収益を得ることに繋げていきます。例えば、従来は製品を販売するだけだったビジネスモデルをサブスクリプションモデルに転換したり、データを活用した新たなサービスを開発したりすることが、ビジネスモデル変革の具体例として挙げられます。DXの最終目標とも言える段階であり、企業の持続的な成長と競争優位性の確立になるでしょう。

ステップ7:継続的なPDCAサイクルの確立

DXは、一度実施したら完了するプロジェクトではありません。市場環境や技術は常に変化しており、顧客のニーズも進化し続けます。そのため、DX推進活動は、導入して終わりではなく、継続的な改善活動こそが成功の鍵となります。この継続的な改善を実現するためには、「PDCAサイクル」を確立することが不可欠です。

計画通りに進んでいるか、目標は達成できているかを定期的に評価し、その結果に基づいて次の改善策を計画・実行していくサイクルを回しましょう。具体的には、導入したデジタルシステムの効果を定量的なデータ(KPI)を用いて測定します。例えば、業務効率化であれば作業時間の短縮率、顧客満足度向上であればNPS(Net Promoter Score)の推移などを確認します。

測定結果を分析
 ↓
効果が出ていない場合は、原因を究明
 ↓
原因を特定
 ↓
システムの設定変更、運用ルールの見直し、従業員への追加トレーニングなどの改善策
 ↓
改善策の実行

このPDCAサイクルを回し続けることで、DX施策は常に最適化され、変化に強い組織へと進化していくことが可能になるでしょう。

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DX推進において、失敗する企業も少なくありません。そこで、どのような点に気を付けたら良いのか解説します。

3-1.DX推進の失敗理由

多くの企業がDX推進に取り組む中で、残念ながら期待した成果を得られずに失敗してしまうケースも少なくありません。 その失敗の主な原因には、いくつかの共通点が見られます。

  • 「DXによって何を達成したいのか」という明確なビジョンや目的が欠如している
    目的が曖昧なまま、流行だから、競合がやっているから、といった中途半場な理由でDXを進めてしまうと、具体的な施策に落とし込めず、絵に描いた餅で終わってしまいます。
  • 経営層の理解やコミットメントが不足している
    DXは全社的な変革であり、経営層の強力なリーダーシップと、変革への投資を惜しまない姿勢が不可欠です。
  • 専門知識やスキルを持った「DX人材」が社内に不足している
  • 部署間の連携不足や現場の従業員からの協力が得られない(社内コミュニケーションの不足)
  • 古くから使用されているレガシーシステムが、新たなデジタル技術の導入やデータ連携を阻害している

以上のような理由で失敗することが良くあります。

3-2.DXを成功させるためのポイント

3-1で取り上げた失敗を回避しつつ、どのようなポイントを押さえれば良いのか…

【DX推進の専任担当者またはチームを明確に設置し、その責任と権限を付与する】

この専任チームが、組織全体のDX戦略を立案・推進し、各部署との調整役を担います。組織全体で「DXそのもの」を目的とするのではなく、あくまで「ビジネス上の課題を解決するため」「新たな価値を創造するため」の手段としてDXを捉える視点を持つ必要があります。

DXありきではなく、ビジネスの目的達成のために、どのようなデジタル技術やアプローチが最適かを検討するようにしましょう。全社で共通の目標に向かって一丸となって取り組むためには、経営層が率先してDXの重要性を発信し、従業員一人ひとりの理解と協力が必要になります。定期的な情報共有や、成功事例の共有などを通じて、DXへの関心を高め、ポジティブな機運を醸成していくようにしましょう。

また、スモールスタートで、小さいな成功体験を重ねていくこともモチベーションを維持するためにも大事でしょう。

DXの成功事例として、2つ紹介します。

1つ目が組織全体を巻き込んだDXの例です。

DXを一部の部門だけの取り組みとするのではなく、経営層から現場の従業員まで、組織全体でDXに対する意識を高め、共通の目標に向かって一体となって取り組む体制を構築しました。組織文化そのものを変革し、従業員一人ひとりがDXの推進者となることを目指しています。

2つ目が製造業におけるDXです。

IoT技術やAIを活用し、24時間無人稼働する工場を実現しました。生産性の飛躍的な向上、コスト削減、高品質な製品の安定供給を可能にしました。デジタル技術の導入が、単なる効率化に留まらず、ビジネスモデルの変革や新たな競争優位性の確立に繋がることを証明しています。

事例集の記事があるので、「DX推進の成功事例15業界20事例!業界別に紹介【随時更新中】」も併せてご参照ください。

DX推進の道のりは、しばしば「何から始めるべきか?」という具体的な手段論に議論が集中しがちです。 しかし、DXを成功に導くための最も重要な最初のステップは、「何から始めるか」という具体的なアクションよりも、「なぜDXが必要なのか」という根本的な目的を明確にするようにしましょう。

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