人月単価ってどうやって誰が決めているのか、本当にその単価が適正なのか、本記事を読んでいただき人月単価に対する考え方を少しでも理解してもらえたら嬉しいです。
IT業界は多重下請け構造にもなっており、上位で案件がもらえるほど単価は高くなります。下にいくほど、安くなる構造になっています。いかに上位で案件が取れるかポイントになるでしょう。
多重下請け構造については、「多重下請け構造とは?発生する原因と回避する方法を解説」の記事をご参照ください。
1.人月単価(にんげつたんか)とは?
まずこの章では、人月単価という言葉の概要について解説します。
1-1.人月単価とは、1人1ヶ月稼働した時の単価のこと
人月単価とは、1人が1ヶ月稼働した時の単価のことを指しています。例えば、1人のエンジニアが月50万円だとすると、「人月単価50万円」と表現することになります。
この場合、単純にエンジニアが1ヶ月稼働したら50万円が報酬として支払われます。当然、スキルが高い人ほど人月単価は高くなります。スキル別の相場は次の章で詳細を紹介します。
1-2.人月(にんげつ)の考え方
続いて、人月単価の考え方を解説します。例えば人月単価50万円のエンジニアを3人、2ヶ月間稼働するとどうなるでしょうか。
50万円×3人×2ヶ月=300万円となります。これを人月で表すと、「6人月」となります。さらに開発が間に合わないから3ヶ月目~5ヶ月目を5人に増員する…となると5人×3ヶ月=15人月がプラスされることになります。合計:15人月+6人月=21人月となります。この5ヶ月間で21人月が稼働したことになります。
金額に換算すると、50万円×21人月=1,050万円となります。実際は50万円で統一されることはなく、各エンジニアの金額で計算するのでここまで単純にはなりません…。
2.人月単価の相場
続いてこの章では、人月単価の相場を解説します。単価はスキルが高いほど上がります。単価の明確な基準はなく、単価を決めるのはそのエンジニアが所属している会社です。フリーランスであれば、ご自身で決めることになります。そのため、相場はあくまで指標として参考までにしてください。
2-1.ポジション別の相場
プロジェクトの立場によって、単価は異なります。重い責任を問われる立場ほど単価は良い傾向にあります。下記の表の通り、まとめました。
| ポジション | 業務 | 人月単価 |
|---|---|---|
| プロジェクトマネージャー(PM) | システム開発全体の進捗管理 | 70万円~200万円 |
| プロジェクトリーダー (PL) | PMの補佐 | 70万円~120万円 |
| システムエンジニア (SE) | 要件定義や仕様書の作成 プログラミング | 初級:80万円~100万円 ※歴5年以降 中級:100万円~120万円 ※歴7年以降 上級:120万円~200万円 ※歴10年以降 |
| プログラマー (PG) | プログラミング | 40万円~70万円 |
2-2.言語別の相場
続いてプログラミング言語別の相場を見てみましょう。言語によって、人月単価の相場は変わってきます。
| プログラミング言語 | 人月単価 |
|---|---|
| Go | 888,399円 |
| Ruby | 876,982円 |
| Swift | 860,499円 |
| Kotlin | 860,001円 |
| Python | 803,290円 |
| JavaScript | 786,969円 |
| PHP | 734,131円 |
| C++(ゲーム) | 711,289円 |
| Java | 694,170円 |
| C# | 681,335円 |
| C言語 | 661,944円 |
| VBA | 603,471円 |
| COBOL | 592,965円 |
| C++(ゲーム以外) | 550,749円 |
| VB.NET | 550,182円 |
2-3.相場通りにいかないこともある
2-1、2-2では相場を紹介しましたが、相場通りに進まないことは良くあります。ポジションやスキル感だけではなく様々な要素で単価は決まっていくからです。では、他には、どのような要素があるのか見ていきましょう。
<プロジェクトの内容に左右される>
どのようなプロジェクトの開発か、によって金額は上下します。システム開発と言っても様々なシステムがあります。
- 業務システム開発
- ローコード/ノーコード開発
- アプリケーション開発
- ホームページ制作
- システム運用/保守
- デザイン など…
中でも業務システムやアプリケーションの開発は、高度な技術を求められることがあるため、やや高めになる傾向が見受けられます。
<地域によって左右される>
同じ国内でも地域によって人件費が抑えられる地域もあります。特にニアショア開発といった手法があり、都心ではなく、地方都市にいるエンジニアを活用した体制作りがあります。地方都市の方が最低賃金も安く人件費を抑えられるメリットがあります。
ニアショア開発の詳細は、「ニアショア開発とは?オフショア開発との違いとメリットを解説」の記事をご参照ください。
<商流によって左右される>
同じ案件でも商流によって提示される金額が変わってきます。商流とは、多重下請け構造のことを指します。上位で案件を獲得したほうが単価は高く、下位になるほど単価は安くなります。
多重下請け構造の詳細は、「多重下請け構造とは?発生する原因と回避する方法を解説」の記事をご参照ください。
3.人月単価の決め方
2章では相場を紹介しましたが、3章では実際にどのように人月単価が決まるのか解説します。
解説と言っても基本的に、単価を決めるのはそのエンジニアが所属している会社です。フリーランスであれば、ご自身で決めることになります。
その人のスキル、プロジェクト経験によって所属している会社の規定に則り金額が決まってきます。なので、同じ経験・スキル感でも会社によっては安い会社もあるでしょう。ただ、2章の通りある程度の相場は決まってきます。
3-1.エンジニアのスキル
まずはエンジニアのスキルをどのように測るかというと、自己申告制でどの開発言語をこれまで何年ぐらい扱ってきたことがあるのか、スキルシートと呼ばれるものにまとめることになります。
スキルシートのサンプルを見てみましょう。

※実績の記載例
このようにどの開発言語、開発工程を何年ぐらい経験してきたかまとめて、査定します。
3-2.エンジニアのプロジェクト経歴
続いてエンジニアのプロジェクトの経歴を見ていきます。スキルシートと併せて、具体的にどのようなプロジェクトに関わってきたのか、そのプロジェクトではどのポジションでどのような作業をしてきたのか具体的にまとめていきます。
経歴書のサンプルを見てみましょう。

※実績の記載例
この経歴書とスキルシートを総合的に見て単価を決めることになります。あくまで単価を決めるのは所属している会社になります。
3-3.スキルシートの確認のポイント
エンジニアのスキルシートは、人月単価を決める重要な資料です。以下の点を確認しましょう。
<開発言語の経験年数を確認>
プロジェクトで使用する開発言語の経験年数を確認してください。ただし、単に年数が長ければ良いわけではありません。直近の経験かどうかも重要です。5年前の経験だけで、最近は別の言語を使っている場合、スキルが陳腐化している可能性があります。
<担当工程の経験を確認>
システム開発の工程(要件定義、基本設計、詳細設計、実装、テスト等)のうち、どの工程の経験があるかを確認します。上流工程の経験がないのに高単価の場合は、単価が適正でない可能性があります。
<プロジェクト規模と役割を確認>
過去に関わったプロジェクトの規模(チーム人数、開発期間)と、その中での役割を確認します。大規模プロジェクトでリーダー経験があれば、その分の評価ができます。逆に、小規模プロジェクトの経験しかないのに高単価の場合は注意が必要です。
<記載内容の具体性を確認>
抽象的な記載が多いスキルシートは注意が必要です。例えば「Webシステム開発」だけでなく、「ECサイトの決済システム開発、Java/Spring Boot使用、チーム5名のリーダーとして基本設計から実装まで担当」といった具体的な記載があるかを確認しましょう。
4.契約形態による違い

人月単価を理解する上で、契約形態についても知っておく必要があります。この章では、システム開発における主な契約形態と、人月単価がどの契約で使われるのか解説します。
本記事では、準委任契約と請負契約で見てみます。
| 項目 | 準委任契約 | 請負契約 |
|---|---|---|
| 報酬の対象 | 業務遂行(時間) | 成果物の完成 |
| 費用の計算 | 人月単価×期間 | 固定価格 |
| 成果物への責任 | なし | あり |
| 瑕疵担保責任 | なし | あり |
| 仕様変更への対応 | 柔軟 | 困難(追加費用) |
| コストの予測 | 変動的 | 固定的 |
| 指揮命令権 | 受注側 | 受注側 |
| 途中解約 | 比較的容易 | 困難 |
4-1.準委任契約とは
準委任契約は、成果物の完成ではなく、業務の遂行そのものを約束する契約形態です。人月単価はこの準委任契約で使われるのが一般的です。
<準委任契約の特徴>
- 成果物への責任がない
エンジニアは誠実に業務を遂行する義務はありますが、成果物の完成責任は負いません - 時間に対して報酬が支払われる
1ヶ月間稼働すれば、成果の有無に関わらず人月単価分の報酬が発生します - 指揮命令権
発注側に指揮命令権はなく、受注側が業務の進め方を決定します - 途中解約
比較的容易に契約を解除できます(契約内容による)
<準委任契約が適している場面>
- 要件が流動的で、開発しながら仕様を固めていく場合
- 長期的な運用保守業務
- 技術支援やコンサルティング業務
- アジャイル開発など、柔軟性が求められるプロジェクト
4-2.請負契約とは
請負契約は、成果物の完成と納品を約束する契約形態です。一般的に固定価格で契約され、人月単価という概念は使われません。
<請負契約の特徴>
- 成果物への責任がある
仕様通りの成果物を完成させる義務があります - 成果物に対して報酬が支払われる
成果物が納品され検収が完了して初めて報酬が支払われます - 指揮命令権
発注側に指揮命令権はなく、受注側が自由に作業を進められます - 瑕疵担保責任
納品後に不具合が見つかった場合、無償で修正する責任があります
<請負契約が適している場面>
- 要件が明確に定義されている場合
- 予算が固定されており、コストの上振れを避けたい場合
- 短期間で完結するプロジェクト
- ウォーターフォール開発など、計画的に進めるプロジェクト
4-3.契約形態を選ぶ際の注意点
準委任契約と請負契約を紹介してきましたが、実際にはどっちを選択すると良いのか迷うときがあると思います。簡単に説明します。
<要件の明確さで判断する>
要件が明確で変更の可能性が低い場合は請負契約、要件が流動的で変更が予想される場合は準委任契約が適しています。間違った契約形態を選ぶと、後々トラブルの原因になります。
<偽装請負に注意>
準委任契約でありながら、発注側がエンジニアに直接指示を出すと「偽装請負」となり、労働者派遣法違反になる可能性があります。準委任契約では、指示は受注企業の責任者を通して行う必要があります。
<契約書の内容を必ず確認する>
契約形態によって権利義務が大きく異なります。特に以下の点は必ず確認しましょう:
- 契約解除の条件
- 成果物の定義と検収基準
- 報酬の支払い条件とタイミング
- 知的財産権の帰属
- 秘密保持義務の範囲
4-4.契約前に押さえておきたいポイント
最後に、契約をする前に先方と詰めておいた方が良いポイントを紹介します。
<稼働時間の定義を確認>
1ヶ月あたり何時間の稼働を想定しているか確認します。一般的には140~180時間(月20~22営業日×7~8時間)ですが、これが明確でないとトラブルの原因になります。また、残業が発生した場合の扱いも確認しましょう。
<途中交代の条件を確認>
エンジニアのスキルが期待に満たない場合や、何らかの理由で継続が困難になった場合の交代条件を確認します。交代が可能か、交代時の費用負担はどうなるか、事前に取り決めておくことが重要です。
<最低契約期間を確認>
多くの場合、最低契約期間(例:3ヶ月)が設定されています。短期間で契約終了する場合のペナルティの有無も確認しましょう。プロジェクトの状況によっては、早期終了したい場合もあります。
<支払い条件を確認>
支払いのタイミング(月末締め翌月末払い等)と方法を確認します。また、稼働日数が月によって変動する場合の計算方法(日割り計算の有無)も明確にしておきましょう。
<成果物の取り扱いを確認>
準委任契約であっても、作成されたソースコードやドキュメントの著作権が誰に帰属するかを確認します。通常は発注側に帰属しますが、契約書に明記されていることを確認してください。
5.人月単価を抑えるためのコツ
5章ではどのような工夫をすれば、人月単価を抑えることができるか解説します。
5-1.オフショア開発を活用する(最大で1/2まで削減可能!)
海外の拠点を活用したオフショア開発を取り入れることで、人月単価は抑えられます。現地の給与での計算になるので、特に東南アジア地域の人材を活用することで抑えることができます。また、商流も気にする必要がなく、そのオフショア開発会社に依頼をすれば自社内にて一括で対応してくれるケースがほとんどです。
海外に出すことが不安な方は、例えば開発の全部を依頼するのではなく一部切り出してお願いする形も検討してみてはいかがでしょうか。
オフショア開発の詳細は、「オフショア開発とは?概要やメリット、成功のポイントを紹介」の記事をご参照ください。
5-2.ニアショア開発を活用する(最大で2/3まで削減可能!)
国内の地方拠点を活用したニアショア開発を取り入れることで、人月単価を抑えることができます。地方拠点になるので、最低賃金を比較しても分かる通り、東京や大阪等の都心部に比べて人件費を抑えることができます。
ニアショア開発の詳細は、「ニアショア開発とは?オフショア開発との違いとメリットを解説」の記事をご参照ください。
5-3.価格交渉をする(最大で数万まで削減可能)
ある程度相場を掴めるようになってきたら、価格交渉をしても良いでしょう。例えば、商流を確認し、スキル感を踏まえて「2~3万円下げてもらえないか。下げてもらえたら確定が出せる。」等…少しでも値引き交渉することは必要になってくるでしょう。
大幅な値下げ交渉はなかなか合意に至りづらいですが、数万円であれば現実的です。
「人月単価」まとめ
人月単価について、解説してきました。人月単価とは、1人が1ヶ月稼働した時の単価のことを指しています。本記事では単価を抑える工夫も解説してきましたが、より具体的な金額は実際に話を聞いてからでないと出せない実情はあります。
- 「人月単価の計算の仕方が未だに良く分からない…」
- 「この人月単価は、適正価格なのだろうか…」
- 「人月単価をなるべく抑えたいので、コストを抑えるための最適な体制を提案して欲しい…」
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弊社はお客様に合わせて様々な体制を組むことが強みでもあり、オフショア開発、ニアショア開発、オンサイト(常駐型)開発、受託開発など…お客様の状況に合わせてご提案いたします。相談は無料!なのでお気軽にお問い合わせください。
