アジャイル開発は、変化の激しい現代のソフトウェア開発において重要な開発手法です。
本記事では、アジャイル開発の基本概念から、ウォーターフォール開発との違い、メリット・デメリット、様々な手法、そして実際の成功事例までを詳しく解説します。
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1.アジャイル開発とは?その本質と重要性
まずは、アジャイル開発の概要について、1章では解説します。
1-1.アジャイル開発の定義と基本原則

アジャイル開発は、「計画→実行→評価→改善」というサイクルを短い期間で繰り返すことで、変化への迅速な対応と顧客からの要望を取り入れやすい開発方法となります。従来の開発手法とは異なり、アジャイル開発は、変化する要件やフィードバックに柔軟に対応できる点が特徴です。
アジャイル開発の基本原則は、個人と対話、動作するソフトウェア、顧客との協調、変化への対応を重視することです。これらの原則に基づいて、チームは自己組織化し、協力して価値の高いソフトウェアを開発できるようになります。不確実性の高いプロジェクトや、要件が頻繁に変更されるプロジェクトに特に適しています。
短い反復期間(スプリント)ごとに、動作するソフトウェアをリリースし、顧客からのフィードバックを得ることで、製品の品質と顧客満足度を向上させることができます。
1-2.アジャイル開発が生まれた歴史
アジャイル開発は、1990年代後半に従来のウォーターフォール型開発の限界を克服するために生まれました。ウォーターフォール型開発は、「要件定義→設計→実装→テスト→リリース」という各工程を順番に進めるため、途中で要件が変更された場合、大幅な手戻りが発生する可能性がありました。変化の激しい現代のビジネス環境において、ウォーターフォール型開発では、迅速な製品開発や顧客ニーズへの対応が困難になっていました。このような背景から、より柔軟で迅速な開発手法が求められるようになり、アジャイル開発が注目を集めるようになりました。
その後、アジャイル開発の普及には、2001年に発表されたアジャイルソフトウェア開発宣言が大きく貢献しています。この宣言は、アジャイル開発の価値観や原則を明確に示し、開発者コミュニティに大きな影響を与えました。
現在では、多くの企業でアジャイル開発を採用しており、ソフトウェア開発の標準的な手法の一つとなっています。
1-3.なぜ今アジャイル開発が重要なのか
現代のビジネス環境は、技術革新の加速、顧客ニーズの多様化、競争の激化など、多くの変化に直面しています。このような状況において、企業が生き残るためには、変化に迅速かつ柔軟に対応できる能力が不可欠となっています。アジャイル開発は、まさにそのための有効な手段となります。
特に、デジタルトランスフォーメーション(DX)を推進する企業にとって、アジャイル開発は必要でしょう。DXは、デジタル技術を活用して、ビジネスモデルや組織文化を変革する取り組みですが、その過程では、多くの不確実性や変化が発生します。アジャイル開発は、このような変化に柔軟に対応し、DXの成功を支援します。
DXの詳細については、「DX推進がなぜ必要なのか?推進すべき理由と成功事例を紹介」の記事をご参照ください。
2.アジャイル開発とウォーターフォール開発の違い
2章では、従来の主な開発形態であるウォーターフォール開発との違いを解説していきます。ウォーターフォール開発が良いケースも有りますので、何でもかんでもアジャイル開発を選択しないように注意が必要です。簡単な比較表にまとめると以下の通りです。
| 項目 | アジャイル開発 | ウォーターフォール開発 |
|---|---|---|
| 作り方 | 少しずつ作って直す | 最初に全部決めて一気に作る |
| 変更対応 | 途中でいくらでも変えられる | 基本あとから変えにくい |
| 進め方 | 短いサイクルで回す(1〜2週間など) | 工程ごとに順番に進める |
| 完成タイミング | ちょこちょこ使える状態になる | 最後にまとめて完成 |
| 向いてるケース | まだフワッとしてる企画 | 要件がガチガチに決まってる案件 |
2-1.開発プロセスと進め方の違い

アジャイル開発とウォーターフォール開発は、ソフトウェア開発における代表的な手法ですが、その開発プロセスと進め方は大きく異なります。ウォーターフォール開発は、上図の通り、「要件定義→設計→実装→テスト→リリース」という各工程を順番に進める、段階的なアプローチとなります。各工程は、前の工程が完了してから開始され、基本的に後戻りはできません。そのため、初期段階での要件定義が非常に重要になります。
一方、アジャイル開発は、短い期間で反復的な開発サイクル(スプリント)を回し、段階的にソフトウェアを開発していくアプローチを採用します。各スプリントでは、「計画→設計→実装→テスト」を行い、動作するソフトウェアをリリースします。顧客やステークホルダーからのフィードバックを各スプリントで取り入れ、継続的に製品を改善していきます。そのため、アジャイル開発は、変化する要件に柔軟に対応できます。
それぞれを比較してみると、ウォーターフォール開発はプロジェクトの初期段階で要件が明確に定義できる場合に適しています。アジャイル開発は、要件が不明確であったり、変化する可能性が高い場合に適しています。
2-2.柔軟性と対応力の違い
アジャイル開発とウォーターフォール開発の大きな違いの一つは、柔軟性と対応力です。ウォーターフォール開発では、初期段階で要件を固定するため、開発途中で要件が変更された場合、大幅な手戻りが発生する可能性があります。そのため、変化への対応は非常に困難です。
アジャイル開発は、反復的な開発サイクルを通じて、顧客やステークホルダーからのフィードバックを継続的に取り入れるため、変化する要件に柔軟に対応できます。各スプリントで、優先順位の高い要件から開発を進めるため、顧客価値を最大化することができます。変化を前提とした開発を行うため、開発チームは、常に変化に対応できるような体制を整えています。例えば、自己組織化されたチーム、頻繁なコミュニケーション、継続的な改善などが、変化への対応力を高める要素となります。
顧客のニーズに迅速に対応し、価値の高いソフトウェアを提供することで、顧客との信頼関係を構築し、長期的なビジネス関係に繋がるのではないでしょうか。
2-3.リスク管理と品質保証の違い
アジャイル開発とウォーターフォール開発では、リスク管理と品質保証のアプローチも異なります。ウォーターフォール開発では、各工程の完了時にレビューやテストを実施することで、品質を保証します。リスクは、プロジェクトの初期段階で洗い出し、対応策を計画します。しかし、開発が進むにつれて新たなリスクが発生した場合、対応が遅れる可能性があります。
アジャイル開発は、反復的な開発サイクルの中で、継続的にテストを行い、早期に問題を発見・修正します。各スプリントで動作するソフトウェアをリリースするため、リスクを早期に特定し、対応することができます。また、アジャイル開発では、チーム全体でリスクを共有し、協力して対応策を検討します。これにより、リスクへの対応力を高めることができます。テスト駆動開発(TDD)やペアプログラミングなど、品質を向上させるためのプラクティスを積極的に採用しています。
※TDD:実装前にテストコードを作成すること
※ペアプログラミング:2人の開発者が協力してコードを作成すること
3.アジャイル開発の様々な手法
3章では、具体的にアジャイル開発の手法を見てみましょう。
3-1.チームによる反復型開発(スクラム)
スクラムは、アジャイル開発の中でも最も普及している手法の一つです。スクラムは、プロダクトオーナー、スクラムマスター、開発チームという役割で体制構築して、スプリントと呼ばれる短い期間(通常1〜4週間)で開発を進めます。
それぞれの役割について、簡単に紹介します。
<プロダクトオーナー>
製品のバックログ(要件リスト)を作成し、優先順位を付けます。
<スクラムマスター>
チームがスクラムのルールに従って開発を進めることを支援します。
<開発チーム>
スプリントバックログ(スプリントで取り組む要件リスト)を作成し、スプリントゴールを達成するために協力します。
スクラムの進め方ですが、毎日の朝会(デイリースクラム)やスプリントレビュー、スプリントレトロスペクティブなどのイベントを通じて、チームの連携を強化して進めていきます。
<デイリースクラム>
各メンバーが、昨日何をしたか、今日何をするか、困っていることは何かを共有します。
<スプリントレビュー>
スプリントで開発したソフトウェアをステークホルダーにデモし、フィードバックを得ます。
<スプリントレトロスペクティブ>
スプリントを振り返り、改善点を見つけます。
スクラムは、透明性、検査、適応という3つの柱に基づいており、チームが継続的に改善していくことを重視します。顧客価値の高いソフトウェアを迅速に開発するための効果的なフレームワークです。
3-2.技術志向のアジャイル開発(エクストリームプログラミング)
エクストリームプログラミング(XP)は、技術的なプラクティスを重視するアジャイル開発手法です。XPは、ペアプログラミング、テスト駆動開発(TDD)、継続的インテグレーション、リファクタリングなど、12のプラクティスを推奨しています。
具体的には下記のような流れになります。
① 計画を立てる
↓
② 小さく作る(小さなリリース)
↓
③ 品質を担保する
├ TDD
├ リファクタリング
├ CI
└ シンプル設計
↓
④ チームで支える
├ ペアプログラミング
├ 共同所有
├ コーディング規約
├ メタファー
└ オンサイト顧客
↓
⑤ 無理せず回し続ける
└ 持続可能なペース
それぞれのプラクティスについて、簡単に紹介します。
1.計画ゲーム(Planning Game)
顧客と開発者が対話しながら優先順位を決定し、短期的な計画を柔軟に見直すことで、変化に強い開発を実現する
2.小さなリリース(Small Releases)
短いサイクルで小さく機能をリリースし、早期にユーザーのフィードバックを得て改善を繰り返すことで価値提供を最大化する
3.シンプル設計(Simple Design)
将来を作り込みすぎず、現時点で必要な機能だけに絞ったシンプルな設計を行うことで、変更しやすく理解しやすい状態を保つ
4.テスト駆動開発(TDD)
実装前にテストを書くことで仕様を明確化し、品質を担保しながら安全にリファクタリングできる状態を維持する開発手法
5.リファクタリング(Refactoring)
外部仕様を変えずに内部構造を改善し続けることで、コードの可読性・保守性を高め、長期的な開発効率を維持する
6.ペアプログラミング(Pair Programming)
2人1組で開発を行い、リアルタイムでレビューしながら品質向上と知識共有を促進し、属人化のリスクを軽減する
7.共同所有(Collective Ownership)
チーム全員がすべてのコードに責任を持ち、誰でも修正可能な状態にすることで、特定の人への依存を防ぎ開発速度を高める
8.継続的インテグレーション(CI)
コードを頻繁に統合し、自動テストを実行することで不具合を早期発見し、大きな手戻りを防ぎながら品質を維持する
9.持続可能なペース(40時間ルール)
長時間労働を避け、無理のない開発ペースを維持することで、チームの集中力と生産性を長期的に保つ
10.オンサイト顧客(On-site Customer)
顧客が開発チームの近くに常駐し、疑問点を即時解決できる環境を整えることで、認識のズレを防ぎ開発効率を高める
11.コーディング規約(Coding Standards)
チームで統一されたルールに従ってコードを書くことで、誰が読んでも理解しやすく、保守や修正がしやすい状態を作る
12.メタファー(System Metaphor)
システム全体を共通の比喩やイメージで表現し、チーム内での理解を揃えることで、設計や実装の一貫性を高める
XPは、特に顧客との密接なコミュニケーションを重視しています。顧客が開発チームの一員として、要件を明確化し、フィードバックを提供できるような体制になるように組みましょう。
XPは、特に要件が頻繁に変更されるプロジェクトや、技術的な難易度が高いプロジェクトに適しています。
3-3.顧客価値を重視した開発(フィーチャー駆動)
フィーチャー駆動開発(FDD)は、顧客にとって価値のある機能(フィーチャー)を中心に開発を進める手法です。FDDは、ドメインモデルの構築、フィーチャーリストの作成、フィーチャーごとの計画、設計、実装、テストという5つのプロセスを定義しています。ドメインモデルは、ビジネスドメインを表現するモデルであり、開発チームが共通の理解を持つために重要です。フィーチャーリストは、顧客にとって価値のある機能をリスト化したものであり、優先順位を付けて開発を進めます。 FDDでは、各フィーチャーを短い期間(通常2週間以内)で開発します。各フィーチャーの開発は、チーフプログラマーと呼ばれる経験豊富な開発者が主導し、他の開発者と協力して行います。FDDは、継続的なインテグレーションとテストを重視し、品質を確保します。FDDは、大規模なプロジェクトや、複雑なドメインを持つプロジェクトに適しています。 FDDは、顧客価値を重視し、ビジネス目標に沿ったソフトウェアを開発することを目指します。FDDは、体系的なアプローチを採用し、プロジェクトの進捗状況を可視化します。FDDは、開発チームのスキルを向上させ、高品質なソフトウェアを効率的に開発するためのフレームワークです。
4.アジャイル開発の事例
4章では、アジャイル開発がどのように導入されているのか、簡単に紹介します。
4-1.スマホ決済サービスの事例

まず、スマホ決済サービスの事例を紹介します。
このスマホ決済サービスは、地域経済の活性化を目指し、2018年にサービスを開始しました。QRコード決済や送金機能などを提供しており、利用者の増加とともに、機能の拡充や改善が求められていました。
そこで、アジャイル開発を導入することで、顧客のニーズに合わせた柔軟なサービス提供を実現しました。開発チームは、スクラムを採用し、短いスプリントで開発を進めました。顧客からのフィードバックを迅速に取り入れ、継続的に機能を改善。例えば、利用者の要望に応じて、加盟店の検索機能やクーポン機能などを追加しました。
アジャイル開発の導入により、競争の激しいスマホ決済市場において、独自の価値を提供して利用者を増やすことに成功しています。
今では地域密着型のサービスとして、地域経済の活性化に貢献しています。
4-2.旅行検索・予約確認アプリの事例

続いて、旅行検索・予約確認アプリです。
この旅行予約確認アプリは、顧客のフィードバックを迅速に取り入れ、UI/UXを継続的に改善している事例です。利用者が手軽に旅行商品を探したり、予約内容を確認したりするためのツールとして重要な位置付けとなっています。顧客満足度を高めるために、アプリのUI/UXを継続的に改善する必要がありました。
そこで、アジャイル開発を導入することで、顧客のフィードバックを迅速に取り入れ、アプリの改善サイクルを加速しました。アプリの開発チームは、スクラムを採用し、短いスプリントで開発を進めました。顧客からのフィードバックを収集するために、ユーザーテストやアンケート調査などを実施。収集したフィードバックを基に、UI/UXの改善や新機能の追加を行いました。
アジャイル開発の導入により、顧客満足度を向上させ、利用者を増やすことに成功しています。
5.アジャイル開発導入の注意点
ここまで、アジャイル開発のメリットばかりを伝えてきましたが、デメリットもあるので注意すべき点を5章では紹介します。
まず、アジャイル開発は、チームの文化やスキルに大きく依存します。アジャイル開発を成功させるためには、自己組織化されたチーム、頻繁なコミュニケーション、継続的な改善を重視する文化が必要です。また、開発チームは、アジャイル開発のプラクティスを習得し、実践する必要があります。
次に、アジャイル開発は、プロジェクトの特性によっては、適さない場合があります。例えば、要件が完全に固定されており、変更の余地がないプロジェクトや大規模で複雑なプロジェクトでは、アジャイル開発のメリットを十分に活かせない可能性があります。プロジェクトの特性を十分に考慮し、適切な開発手法を選択するようにしましょう。
さらに、アジャイル開発の導入には、組織全体の協力が必要です。アジャイル開発は、開発チームだけでなく、ビジネス部門や経営層など、組織全体の文化やプロセスを変革する必要があります。組織全体でアジャイル開発の価値観を共有し、協力して取り組むことが重要ではないでしょうか。
「アジャイル開発」まとめ
アジャイル開発は、反復的な開発サイクルを通じて、顧客のフィードバックを迅速に取り入れ、継続的に製品を改善します。また、チームの自己組織化やコミュニケーションが重要な開発方法となります。
また、アジャイル開発の導入には、組織全体の協力が必要です。組織全体でアジャイル開発の価値観を共有し、協力して取り組むことがアジャイル開発の成功へ繋がるのではないでしょうか。
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